Webサイト制作企業にお勤めの方で次のような疑問を持った、もしくは持っている方はいらっしゃらないでしょうか。
- ディレクターってなんでそんなに高給もっていくの?
- マークアップエンジニアってなんで薄給なの?
- デザイナーの給与ってどのあたりが妥当なんだろう……
この辺の疑問を現役Web制作会社勤務兼Plant Hagalazのアシスタントをお願いしているN氏に赤裸々に語ってもらいました。
N氏について
現役Web制作会社社員でマークアップエンジニア経験後、フロントエンドエンジニアになり活躍している。その傍らでPlant Hagalazのアシスタント業務を務めているタフな人。
以下N氏の寄稿になります。
Web制作にはお給料ヒエラルキーがあります
私のいる会社では、Web制作は企画立案、工程管理、顧客対応を主として行うディレクター、企画をデザインに起こすデザイナー、デザインやUIをWeb上に反映させるフロントエンジニア/マークアップエンジニアが連携して行っています。
お給料は高い順にディレクター>デザイナー≒フロントエンドエンジニア>マークアップエンジニアです(大体)。
私がマークアップエンジニアだった頃、大量のコーディング依頼をされて午前様が続いていて、「あれ、なんか労力に見合わない給料だな」と漠然と感じていました。
そして後日お給料ヒエラルキーがある事実を知り、愕然としました。先輩の話によるとお給料ヒエラルキーが前述のようになっている理由は、「スキルと担っている責任の重さの差」であるとのことでした。当時下っ端だった自分はひねた考えで「ふーん、そういうものか」と考えていました。確かにじーっとディレクターやデザイナーを見ていると、忙しそうなのですが……。実際どれくらい忙しいのか、何が大変なのかはわかっていませんでした。自分のことでいっぱいいっぱいでした。
Plant Hagalazをお手伝いするようになってやっとヒエラルキーを理解できるようになりました
フロントエンドエンジニアになって、そこそこ仕事もササッとこなせるようになってきて、会社の体制も変わったりして、修行がてら副業をしようと思い、知人の葵さんのいるPlant Hagalazのアシスタントをさせてほしいとお願いしました。
そうしたら、いきなり目の前にデザインの本とディレクションの本数冊をどん、と置かれ、
「これ全部読んでおいてね。来週ワイヤーづくりから納品まで全部お願いすると思う。分からなくなったら聞いてください」
といわれました。
目が点になりました。いきなりディレクションの領域からやるの? と、軽くパニックになりました。が、泣き言は言っていられないのでとにかく本を読み、職場の役割分担の様子を思い出し、どういう順番で作業を進めるかを整理し、工程表を作りました。
この時点で一旦葵さんと相談。工程表で問題があるところを洗い出し修正しました。
ディレクターのお仕事体験
そして運命の「来週」がやってきて、ワイヤー作成に入りました。クライアントの結構ざっくりした希望を何らかの形にしなければなりません。ない頭とセンスをひねりだし5パターン作ってそのうち1パターンをブラッシュアップしてデザインにすることに。そのブラッシュアップが結構大変でした。クライアントからOKがもらえるまで、そして割と短時間で完了させないといけません。この作業だけですでにギブといいたかったです。
クライアントとのやり取りは葵さんが担当でしたが、もしも自分がそれもやるとなると、ワイヤー作成って大変な作業です。時間もかかるし頭も使う。リテイクにも折れない心が必要。
ディレクターって大変だな……と思いました。ディレクターのお仕事はこの後納品まで続きますが、ひとまずお疲れ様です、ということにしておきます。
デザイナーのお仕事体験
さて、次はワイヤーをもとにデザインです。
いつもデザイナーさんの作った美しいカンプを見ているからそのように作ろう、とソフトを立ち上げますが……デザインでよく使う機能を把握しきれていないので作業がはかどらず……。
やっと作った3パターンのデザインは3つとも「配色がなんかすごーくヘン」とだけ言われリジェクト。配色センス……難しいですね。
頭を抱えながらいろいろ調べたり、職場のデザイナーさんの仕事ぶりをふりかえってみたりしつつ配色変更して葵さんに提出すると、クライアントに出してもいい? と聞かれたので、「お願いします!(残り得意分野だけだ!)」と言って眠りにつきました。
デザイナー……しんどい。
いよいよコーディング……なんですが
デザインはクライアントから修正があったので、OKが出るまで修正をしました。ここはそんなに大変ではありませんでした。
やっとデザインにOKがでたので、次はコーディングです。得意です! デザイン的にも問題なくできそう!
と思っていましたが、甘かったのです。
自分の作ったデザインがスライスしにくいったらない……。だれだ、こんなデザインを作った人、自分だ……。文句も言えないわけです。
嘆いていると「デザインはフロントエンドエンジニアが切りやすいようなレイヤー構成にしたほうがいい……」と葵さんがぼそっとつぶやきました。なぜ今さらそんな助言を……と思いましたが、後になってその意図が明らかになりました。
失敗体験は体に強く残る、ということです。失敗は反省して次の糧にできます。私が次にデザインをするときはスライスするときの効率を意識して制作することでしょう。
やっぱりデザイナーさんてすごい、と感じた瞬間でした。ある程度フロントエンドエンジニアの作業内容を把握していなければいけないわけです。
結局お給料ヒエラルキーって妥当なのか
いろいろ体験して感じたことは、お給料ヒエラルキーはある程度は妥当だということ。
マークアップエンジニアに比べてデザイナー、ディレクターは圧倒的に「考えて形にする」時間が多いです。そして他職、外部の人と連携する機会がマークアップエンジニアより比較的多めです。特にディレクターは納品までずっと担当するわけですから、仕事量も多く、お給料が多めなのも納得がいきます。マークアップエンジニアはそれらによって生み出されたデザインをコーディングする作業者的位置づけなので、お給料がやや低めなのでしょう。
これがフロントエンドエンジニアとなると違ってきます。CMSの組み込みに関する深い知識とJavaScript等を使用したちょっと複雑な動きを提案、実現しなければなりません。そうなると立ち位置的にはデザイナーさんと同じくらい、人によっては上を行きます。私の所属する会社ではフロントエンドエンジニアとデザイナーさんのお給料は互角です。
最後に
長々と書きましたが、それでももうちょっとマークアップエンジニアの皆様の待遇を上げてほしいな、というのが個人的な考えです。マークアップエンジニアだって最低2言語は覚えなければいけないし、仕事のスピードやコードの美しさなどが求められるので、それなりに大変です。
ヒエラルキーを崩さないぎりぎりのところまで上げられないものでしょうか……。
N氏のお話はいかがでしたでしょうか。
皆さんはご自分のお給料ヒエラルキーに納得がいっていますか?
もしも納得がいっていなくてもやもやしているようでしたら、会社の人を観察してみるのも一つの手かもしれません。
余談ですが、このN氏の最初の案件は私の友人のサイトで、納期が決まっていなかった上にN氏がトライアル担当することについて承諾を得ていました(納期については最後まで内緒にしておきましたが)。N氏ができなければ自分が担当しようと思っていましたが、さすがプロの制作者、未経験の分野でも積極的に勉強してなんとか期日までに仕上げてくださいました。過酷な思いをさせてごめんなさい。